流しそうめんを逆流させ錯覚をつくり○○に触れてしまった授業とは? 【阪大おもしろ授業レポ #5】
「これムリじゃね……?」
「はい、絶対無理です」
「あーーーーこれで全部白紙になったーー!!!」
【阪大おもしろ授業レポ】とは……?
阪大の選りすぐりのおもしろ授業を紹介していくコーナーです!
大学の授業は大講義室で席に座って先生の話を聞くだけ、、、と思われがちですが、意外とそうでもなかったりします。
阪大には思い出に残るようなおもしろ授業がたくさん眠っています。その魅力をたっぷりとお伝えしていきます。
今回は私が今まで受けた中で一番楽しかった授業、協働術G(デザインラボ)をお届けします。
さて、冒頭からとんでもない悲鳴が聞こえてきています。果たして何が起こったのでしょうか。それではお楽しみください。
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協働術G(デザインラボ)
「協働術G(デザインラボ)」
この名前を見ただけで何の授業か分かったらそれはもう大したものです。
「協働術G」と言われると何となくグループワークをするのかなと思いますし、「デザインラボ」聞くと何かデザインをするのかな、と思う程度でした。
そこでこの授業のシラバス(授業の説明が書かれたもの)を読んでみます。
「本授業では(中略)中学校の子どもたちと過ごす学習プログラムをデザインします」
……???
要約すると、夏休みのまとまった日程を使ってとある村に1つだけある中学校の生徒さんと交流をする、そしてその学習プログラムをデザインする、という授業なんだとか。
さらに読み進めてみると、基本的にはグループワークでプログラムを考え、プレゼンを行い、最終的には実際に現地まで行って泊まりがけで企画をする、というのがゴールのようです。
今まで阪大おもしろ授業レポシリーズでは十分変わり種な授業を取り上げてきたのですが、これはその中でも群を抜いているようです。
これはおもしろいに違いありません。
というわけで履修を決めた4月なのでした。
ガイダンス
通例大学の初回の授業はガイダンスから始まります。
この授業も例外ではありませんでした。受講生は15人弱。そして先生が……4人もいました。
なんと豪華な授業でしょう。
中学生との交流プログラムということで、それぞれの分野の専門の先生が私たちに知恵を貸してくださるようでした。
先生からの説明をまとめると以下の通りになります。
- 中学生との交流プログラムをグループで考え、8月に現地で実施するPBLスタイルの授業である
- 授業は週1回だが、グループでの時間外活動が例年必要になる
- 授業として行うのはプログラムのデザインまで。8月に行くのは単以外の活動となる。旅費や宿泊費は全額大学負担
- ただ遊びを提供するのではなく、中学生にとって学びや新しい気づきがあるようなプログラムであること
ざっとまとめるとこのようになりました。
なるべく学部や学年がばらばらになるように、ということでグループが3つに分けられました。
私のグループは大学院生1人を含む4人、あとから留学生の方が1人入って5人グループで進めることになりました。
自己紹介もそこそこに具体的にどんなことをやってみたいのか、個人の理想を述べて、初回の授業は終了となりました。
アイデア発散・理想を語る
前年度の実施例を参考に、どんなことができそうか、どんなことがしたいのかを話し合います。
個性的な案がたくさん出てきましたね笑
ある先生が
「私研究室にドローンありますよ!」
と言うんですね。
じゃあ、中学校の周りの自然をドローンで撮影して植物観察にするか! なんてとんでもないことがぽんぽんと飛出すのです。
最終的にはもっと凄いことになったのですが……
するとグループの中のある1人が言ったのでした。
「流しそうめんやりたいです」
大学生が中学校まで行って流しそうめんをする。なんとも楽しそうです。
中学校がある場所がとても自然豊かな場所なので、竹の調達は簡単そうです。
まだまだアイデアが出尽くされたわけではないのですが、とり「流しそうめんをしたい」というただそれだけの方向性でプログラムが進んでいくのでした。
中身がない
流しそうめん万歳、とグループのメンバーで盛り上がっていると先生から呼び出しが入ります。
「大学生が中学生と流しそうめんをやって何が得られるのか」
「流しそうめんである必要性はあるのか」
「現地に行ける時間が限られているのにどのように流しそうめんに使うものを調達するのか」
要はだめ出しが入りました。
ある程度予想していましたが、本来の授業のコンセプトは中学生に刺激を与えるプログラムを考える、というものです。
流しそうめんで遊んでいるだけでは何得るものがない、という先生のご意見はごもっともでしょう。
こういうことを言っては何ですが、大学の世界、研究の世界は「こじつけ」が何よりも大事です。
いかに学術的価値があるかを上手に説明できさえすれば好きなことをしてもよい世界なのです。
ということで、とにかく流しそうめんをするためのこじつけを探そう、ということである考えが生まれたのでした。
逆流する流しそうめんをつくろう
そこで生まれたのが本来は上から下に流れていく流しそうめんを下から上に逆流するスタイルで作ろう、というとんでもない考えなのでした。
そうめんが下から上に上っていくんですよ笑
どうやってやるかは今では見当もつかないのですが、とにかくそんな素晴らしいトリックを生み出すことができれば中学生に何らかの刺激を与えられるだろう、とそういう考えに落ち着きました。
んで……そのそうめんを逆流させるにはどうしたらよいのでしょうか。
皆さんは思いつきますか? もし思いついたら当時の私たちに教えてほしいものです。
当時の私たちが苦し紛れに考えたのが錯覚でした。
目の錯覚で坂道をボールが上っていく、みたいなの見たことがありますか?
あれを流しそうめんの竹で再現したらおもしろいだろう、と考えたのでした。
錯覚ならなんとなく学術的な感じもするし、錯覚、視覚、脳科学みたいな観点で中学生に興味を持ってもらうこともできるかもしれません。
我ながら完璧なアイデアでした。
どうやってそうめんを逆流させるのか
無理でした。
結論から言うとそうめんを逆流させることは無理でした。
私たちもそれはもういろいろ考えましたよ。
- 遠近法みたいな感じで高さをつけて上と下の竹の太さを変えたらできるのではないか。
- 竹ではなくペットボトルを使ったらいい感じになるのでないか。
- カメラの向きを横にして撮影したら逆流しているように見えるのではないか。
そんな感じでいろいろなアイデアが出ては消え、出ては消え、と繰り返されたのでした。
そこで達した結論はこれ。
「そうめんを逆流させることはできない」
でもこれで終わっては流しそうめんをする、という野望を叶えられない。
なんとか先生を納得させて流しそうめんをするためにはどうしたらよいのか。
結果的に錯覚の模型を紙でつくってみんなで鑑賞したあと「おまけだよ」という位置づけで流しそうめんをやったらいいのではないか、とこそこそ計画していたのでした。
紙で錯覚の模型をつくる
何かに困ったときは必ずその道の先人の知恵をお借りすることが大切なのです。
そんなわけで適当にググっていますとこんな本が見つかったのでした。
「これを使おう」
ほかのグループに比べて進捗が大きく遅れていた私たちのグループはよほど麻痺していたのでしょう。
先人の知恵の模型をそのまま紙で再現しよう、中学生と一緒に工作しよう、そして脳科学的な観点から錯覚の仕組みを説明しよう、ということになりました。
いざ実験、時間外労働で土曜日に大阪大学の吹田キャンパスの図書館前のテラスに集合します。
大の大学生が土曜日に図書館前のテラスで紙を切ってコソコソ楽しんでいるのです。
周りから見たらそれはそれはシュールな光景だったと思いますよ。
いざ実践。100均で買ってきた厚紙をはさみで切ってYouTubeで見た錯覚の模型を再現していきます。
「これムリじゃね……?」
「はい、絶対無理です」
「あーーーーこれで全部白紙になったーー!!!」
はい。こんな結果となりました。
そんな私たちの現状をあおるかのごとく雨がザーザーと降り出してきました。
大雨の中、机の上に紙を広げてよく分からない物体を組み立てて騒ぐ大学生たち。
一応図書館の前なので、ほかの学生さんは何か頭の良さそうな本を抱えて出入りしてるのです。
そんな前で私たちは何をしているのでしょうか。
錯覚を組み立てることが不可能と分かった今、私たちの計画は今目の前にある100均の厚紙のごとく白紙になってしまったのでした。
流しそうめんも無理でしょう。
授業も半分が終わり、そろそろ後半戦、具体的なプランを詰めていかなければならない時期です。
そんな時期に一気に計画が白紙になってしまったのでした。
果たしてどうなるのでしょうか。
起死回生の3Dプリンター
翌週の授業で先生に紙で錯覚の模型は作れなかったことを報告しました。
「できなかったんじゃない、できないことが分かったんだ」
励みになるのかも分からない先生のありがたい言葉をいただいて再度プランを練ります。
でも、ここから新たに新しいプランを作り上げることは難しいでしょう。
なんとか今まで考えてきた案で使えそうなものを探します。
錯覚が、流しそうめんが、脳科学が、、、
すると先生からとんでもない一言がこぼれます。
「○○先生って研究室に3Dプリンターありましたっけ? それ使ったら錯覚の立体とかもできるんじゃないですか?」
「3Dプリンターありますよ。皆さん使います?」
「ありますよ。」じゃないですよ、なんでそんな高等そうなマシンを「パソコン持ってる?」くらいの感覚で話すのでしょうか。
これだから大学教員は恐ろしくてたまりません。
「それだ!」
先生曰く、使い方さえ覚えれば割と簡単にできる、ということなので3Dプリンターを使って立体をデザインする、をコンセプトに計画を進めることになりました。
3Dプリンターナイス!
3Dプリンターで最先端技術を体験しよう
こうしてできあがった企画が「3Dプリンターで最先端技術を体験しよう」というものでした。
ある日の授業時に中学校から校長先生が視察に来て私たちからプログラムの説明をする機会がありました。
小見出し下の画像はそのときに実際に私が作成してプレゼンした内容になっています。
スライドは全仏私が担当したので、著作権は私にあります。ということでどんどん載せていきたいと思います。
まずは3Dプリンターとは、ということで説明をします。
ショベルカーの画像があるのですが、これは先生が設計して実際に3Dプリンターで作ったものだそうです。
「ほしい」って言ったら先生がくれました。今でも持っています。
先生曰く、組み立てるのではなく、ショベルカーの完成形がそのまま出てくるんだとか。
手で作れない立体も作成できること、実際に3Dプリンターが社会で使われていることをアピールして勉強とのこじつけは完璧です。
3Dプリンターを扱うと決まってからはグループワークはスムーズに進みました。
おおむね、3Dプリンターを知る、立体をデザインする、3Dプリンタを体験するという3段階でプログラムを構成しました。
これで当初予定していた流しそうめん計画は完全になくなりました。
学習内容ということで、情報リテラシーについても含めることとし、先生も納得のプログラムができあがりました。
残業 3Dプリンターを触る
さて、夏休みもほど近いある暑い日、8月あたまくらいの時期でした。
先生が3Dプリンターを実際に触らせてくれるということで大学まで出向きます。
先生は不在と言うことで研究室の鍵を事前にいただいて潜入します。
部屋に入ると……あった! そこには少し大きめな段ボールがあり、その中には見たこともないマシンが……これがいわゆる3Dプリンターのようです。
私は機械のことはまったく分からないのですが、理系の先輩が要領を心得ているようでどんどん進めていきました。頼もしい!
そして事前に設計してきた立体を読み込んで……
なんか糸みたいなやつマシンから出てきました。
それがミルフィーユのように重ねられていき……10分ほどすると飛行機みたいな薄っぺらい立体ができました。
これが今回使うタイプの3Dプリンターのようです。
当初錯覚の立体を作るつもりだったことも意識して例の先人の模型をまるパクリしたような立体もデザインしてつくっていきます。
私がこれから一生かかっても触れることがない領域だったので感動でした。
授業終了 中学校に出発……できず
本来であれば授業が終了したら単以外の活動ということで中学校に出発し、実際にデザインしたプログラムを行う、ということなのです。
ところが私はどうしても都合がつかず行けませんでした……悲しいかな悲しいかな…
あとから実際に言ったメンバーから聞いた話だったのですが、
「めっちゃ楽しかった」
とのことです。
景色よし、温泉あり、中学生と遊ぶのも楽しかった、夜は宴会、という思い出に残る夏休みになったそうです。
そんな私を不憫に思ったのか、先生が救いの手をさしのべてくれました。
「9月の半ばにお礼と事後報告を兼ねて一緒に行きませんか?」
そういうわけで私のほかに行けなかったメンバー2人は先生の車に乗って片道3時間かけて中学校まで行きました。
校長先生曰く、生徒たちはとても喜んでいたらしく、私たちのグループのプログラムである3Dプリンターのためにみんなでデザインした立体もプレゼントしました。
飛行機とか戦艦とかを作っていた人もいたようで、楽しんでもらえたようです。
PBLで学ぶ ーデザインラボー
今回ご紹介したような実際にある問題をテーマに研究、探索、デザインを行うことはPBL、”Problem Based Learning”とよばれます。
大学でよくあるの講義型の授業ではどうしても学生は受け身になりがちです。
実際のできごとや問題に焦点をあてて、学生自らが主体的に行動することを目標に考えられた授業ということで、残業あり、時間外出勤あり、精神的負担あり、ということでとても2単位では足りないようなハードな授業ではありました。
私は実際に中学校を訪れて交流することはできなかったのですが、それでもこの授業で得たものは多かったと思います。
人との出会いはもちろん、プログラムを考えるプロセス、教育のありかた、3Dプリンターなんていう未知の世界にも触れられました。
まだまだ学部生向けのPBLタイプの授業はまだまだ少ないですが、見つけたらぜひ挑戦してみてください。
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